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執筆者の写真ひろゆき 大石

認知症の症状について

まず認知症の中でも最も多いアルツハイマー型認知症と血管性認知症の2つについて症状の違いから説明したいと思います。

アルツハイマー型認知症の場合、

初期の症状として最近の出来事を忘れる記憶障害があります。

例えば、数分前に聞いた会話が思い出せない、

前日や前々日にしたことが思い出せない、などです。


しかし過去の出来事はある程度思い出せるので、

自分の青春時代の話は詳しく語れることもあります。


判断力の低下も徐々に始まり、服の組み合わせを間違えたり、

お金の管理が難しくなったりします。

また、物を盗られたような被害的な妄想を抱くようになる場合も少なくありません。

この妄想から、家族を詐欺師だと疑ったり、

金銭管理を家族に任せなくなったりすることもあります。


一方、血管性認知症の場合は動作の遅さや麻痺などの身体症状が先行し、

判断力低下よりも実行機能障害が目立ちます。


例えば、服を着る順番が分からなくなったり、

歯ブラシやコップの使い方を忘れたりします。記憶障害も生じますが、

たいてい最近の出来事より過去の出来事のほうが影響を受けやすい傾向にあります。

物を盗られたような被害妄想は少なく、

人格変化や感情コントロールの障害も目立ちにくい特徴があります。


次に認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)について説明します。

これは認知症の人に見られる周辺症状の総称で、

妄想・幻覚・興奮・暴力・抑うつ・不安などが代表的です。


妄想では「家族が別人にすり替わった」「部屋に盗聴器が仕掛けられている」などの

被害的内容が多く見られます。現実とは異なる異常な信念にとらわれ、

時には暴言や暴力に繋がる場合もあります。

幻覚では存在しないものが見えたり、聞こえたりする場合で、

「部屋の隅から子供がこの通り見ている」「耳元で誰かが囁いている」などがあります。


興奮とは落ち着きがなくて立ち歩き回るなど穏やかでない状態のことです。

特に日の入れ替わりの夕方や夜に出現しやすく、「サンダウ症候群」とも呼ばれています。

不眠が続き疲れが蓄積することで発生しやすくなるため、

生活リズムの安定がとても大切です。

抑うつには、気分の落ち込み以外にも意欲の低下があり、活動への参加が減少しがちです。思い出したい過去の出来事が次々ネガティブなものに偏ったり、

自分の身の回りの出来事が全てネガティブに受け取れたりする傾向が見られます。


BPSDへの対応として、生活環境を整えることや医療面の介入の他、

本人の気持ちを受け止めることが大切です。

妄想や幻覚から現実を完全に引き離すのではなく、

本人の世界に共感的に入り込み、情動面で支える関わりが求められます。


次に進行に伴う認知症の中期から後期の症状である

意味内容障害(言語機能障害)について説明します。

会話が成り立たなくなってくる時期で、大きく分けて3つの段階があります。


最初の段階では、単語は出てくるものの文章としてはまとまらない

言語機能低下が生じます。

次の段階では、名詞が中心で意味内容が単純な短い文になります。

最終段階では単語レベルまで低下し、最終的に言語がほぼ消失します。


この意味内容の理解障害は、軽度から高度の認知症にかけて徐々に進行します。

例えば、会話の中で同じ質問を何度も繰り返したり、

ちぐはぐでまとまりのない会話になったりします。

質問の意味が分からなかったり、適切な答えが出てこなかったりします。

相手の話をほとんど理解できなくなり、コミュニケーションが成立しなくなるのです。

いわゆる「意味不明の言動」といわれる症状の背景には、

この意味内容理解の脆弱性が関与しています。


行動面では判断力・遂行能力の低下から、

慢性的な身体疾患に対する対処行動ができなくなります。

例えば、尿意や便意の自覚が鈍くなるため、失禁のリスクが高まったり、

疼痛などの自覚症状から体調不良に気づきにくくなったりします。

こうした症状は注意障害といわれ、認知機能低下とともに日常生活動作能力に影響します。


認知症が進むにつれ、基本的生活習慣が崩れ、

見当識障害から正しい時間管理ができなくなります。

また歩行を含む全身状態の悪化で転倒骨折のリスクも高まり、

最終的に寝たきり状態となります。

こうした状況下での感染症は重症化しやすく、

認知症の原因疾患とは直接関係のないところで他疾患による併発症が

原因で目を閉じるケースが少なくありません。


認知症ケアに携わる家族の心理社会的負担も決して軽くなく、

介護疲れに陥ったり、抑うつ状態になる方も少なくありません。

行動障害への対応などでイライラが蓄積すれば、

家族内にもストレスがたまりやすいです。

そうしたことから、本人と同時に、家族を支えていく関わりも

認知症ケアには重要といえます。


以上、長くなりましたが認知症の症状について、

できる限り具体例を挙げて説明いたしました。

ご不明な点などありましたら遠慮なくお聞きください。

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